- 僕は何だってできるんだ
- 僕は悪くないからね
- 僕を悪いという奴が悪いんだ
小さな子どもなら「はいはい、可愛いね」と思えるこれら言動。大の大人がやっていたとしたらどうでしょう。
これほど見苦しいものはありませんよね。
実は大人になってまで「物事は何でも自分の思い通りになる」と本気で思う人間が一定数存在します。
この精神的に未熟な感覚が「幼児的万能感」。
見た目は立派な大人なのに、心が幼児なんだね。
自己愛人間は、まさにこの幼児的万能感を抱えた典型例。
当たり前の大人と思い接すれば、あなたの感覚はみるみる狂い、自己を吸い取られていく結果になりかねません。
この記事では、元サレ妻で夫婦心理カウンセラーの筆者が、幼児的万能感の特徴や適切な対応について解説します。
筆者の元夫も、幼児的万能感を強く抱える自己愛人間。わかり合いたいと思い向き合うほど、絶望が深くなっていきました。
大人の見た目に騙されず、子どもおじさんに振り回されない術を身につけていきましょう。
幼児的万能感|周りは自分の思い通りという感覚
赤ちゃんや幼児の頃は、泣けば母親が寄ってきてくれ、自分の気持ちは言わなくても察してもらえ、大人が自分のために願いを叶えてくれます。
通常であれば成長過程の中でさまざまな挫折や葛藤を経験し、
- 自分は万能じゃない
- 思い通りに行かない現実もある
- 他人と譲り合うことも大切
と学ぶもの。
しかし「周りは自分の思い通りに動くはず」という感覚から抜けきれないまま大人になったのが、幼児的万能感を抱えた人間です。
そして自己愛人間はこの幼児的万能感の持ち主。
歪んだ自己愛を抱える人間。空想上の「イケてる自分」に過剰な愛を持つ。共感性がなく他者を傷つけても平気な反面、他者評価には敏感。自己愛性パーソナリティ障害(NPD)と診断されることも。
幼児的万能感を隠さずナルシスト全開な人間が尊大型自己愛人間(尊大型NPD)。対し、心の中には幼児的万能感をしっかり持ちつつも、表向きは穏やかな良い人を演じているのが隠れ自己愛人間(脆弱型NPD)です。
そんな自己愛人間が抱える幼児的万能感は、ただ駄々をこねるだけの幼児感覚ではありません。
自己愛人間が持つ幼児的万能感 【7つの特徴】
幼児的万能感は、「幼児の心のまま」でありながらも「大人の理屈をこねる」嫌らしさも持ち合わせています。
具体的特徴は、大きく以下の7つ。
特徴1:自分は特別で優秀
幼児的万能感を抱える人間は、自身を特別で優秀な人間だと、根拠のない自信を持っています。
それが決して現実ではなくても。
自分は特別という空想世界に浸っていれば、現実のみっともない自分を見ずに済む。
だから目上の人間に媚びて自分の優秀性を感じたり、自分をチヤホヤしてくれる人を側に置き、自己陶酔に浸ります。
「やっぱり僕は素晴らしい人間なんだ」と。
特徴2:自分は与えられて当然
自分は特別なので、周りは自分に与えて当然と思っています。
いわばクレクレちゃん。
- 優しくしてくれて当然
- 俺の感情を察してくれて当然
- 俺の機嫌をとってくれて当然
- 俺を労ってくれて当然
- 俺の望むもの提供してくれて当然
自分大好き構ってちゃんなので、些細な体調の変化で体調不良アピールする一面も。
自分は他人に与えないか、自分都合で与えたいものしか与えないのに、他人が自分に与えないことには敏感です。
特徴3:理想以外は受け入れない
「素晴らしい自分」の空想世界に生きているので、理想化された自分以外は受け入れません。
理想化された自分を援助するか否かで、他者への扱いが変わります。
自分の望むものを与えてくれ「素晴らしい自分」を実感させてくれる人間は味方。反対に、素晴らしい自分を脅かす存在は脅威。敵とみなし、徹底的に無価値化します。
理想を他人に当てはめる傾向も。
他人の容姿や能力を心の中で見下す傾向が顕著です。強き者に媚び、弱き者をゴミ扱い。
特徴4:周りは自分を評価すべき
彼らにとって、自分は周りから評価されて当然の存在。能力や相手に与えたものに対し、賞賛や評価を過剰に求めます。
それらを得ることで、素晴らしい自分を実感できるから。
プライドが高い彼らには、評価や賞賛は大好物。
「みんな僕をたたえよ!」と内心本気で思っています。
評価されなければ、「ここは俺のいるべき場所じゃない」と言わんばかりに、周りを下げることで自分を正当化します。
特徴5:他人の感情は理解したくない
「周りは自分の気持ちを察して当然」と思っているのに、自分は他人の気持ちに無関心です。
自分の言動でどれだけ他人が苦しもうと、人生が狂おうとも、知ったこっちゃありません。
自分の快・不快が全てなんだね。
だから他人が傷つき助けを求めていても、労わるどころか「俺を気遣わないお前が悪い」状態。家族でさえも。
快楽と体裁のためなら、相手の理解はおろか、平気で相手の感情を利用します。
特徴6:些細な否定に打たれ弱い
他人のことは平気で否定しますが、自分が否定されることは大嫌い。「自分は正しい」と常に思っているから。
ちょっとした失敗や間違いに対する必要な指摘でさえも、「自分自身を否定された」と大袈裟に受取り、劣等感や恥の感情で支配されます。
些細なことで鬱っぽくなったり、相手を見下して正当化したり、根に持ってグチグチ言い続けたり。
特徴7:不都合な状況は他人や環境のせい
思うような評価や賞賛が得られなかったり否定されたりすると、通常の人間なら「何が問題だったかな」と反省し改善するもの。
しかし、幼児的万能感を持つ人にこのような思考はありません。
- 俺を評価しない周りがおかしい
- 周りに才能がないせいだ
- 俺を否定する相手がおかしい
- 俺に与えない相手が悪い
- 配慮が足りない相手が悪い
- 相手がおかしいから俺の行為は許される
- 俺はこんな所で縛られているような器の人間じゃない
都合よく他人のせいにできる便利な頭だね。
他人や環境のせいにすれば「素晴らしい自分」の着ぐるみの中にいられるからね。
そのように他者の価値を下げることで、本当の自分に向き合うことから逃げ続けるのです。
自己愛人間が幼児的万能感を抱く原因
人は人生の中で挫折や葛藤を経験しながら、物事の善悪や他者との折り合いを学びます。
しかし自己愛人間のような幼児的万能感を抱える人は、葛藤による学びを自分の中に取り入れないまま大人になった人間。
その原因は、幼少期の生育環境が大きく関係します。
原因1:過保護・過干渉で育った
過保護・過干渉で育つと、「少し泣けば大人が自分を満たしてくれるはず」といった赤ちゃん感覚から抜けきれません。
自分で対処すべき現実に直面しないよう、周りの大人が成長の機会を潰してきたから。
過剰でいびつな愛が注がれ続けた結果、何もしなくても不快は取り除かれ、何も言わなくても欲しいものが与えられた。
まるで赤ちゃんかのように。
そして大人になってまで「周りは自分のためにある」と勘違いします。
原因2:挫折や失敗から逃げて育った
自分に不都合な現実に直面した場合でも、葛藤から逃げ続ければ幼児的万能感を抱く人間に育ちやすいもの。
- 親に失敗の尻拭いをしてもらう
- 誰かのせいにして他者の問題扱い
- そんな自分を肯定してくれる存在
- 得られないものは無価値と見下す
「自分の問題じゃないね」
「何とかしておいてよね」
自分が責任を取らなくても何とかなると。
原因3:適切な愛情もらえず育った
親に甘えさせてもらえなかったばかりに、幼児的万能感を抱えるパターンも。
- 親からの愛情を感じず育った
- 良い子の時だけ愛情もらえた
- やることなすこと否定された
- 両親不仲で家庭に居場所がなかった
- 母が父の顔色伺いで自分は見られてなかった
「自分は愛されない人間」
「自分は自分のままではダメなんだ」
その感情が幼少期に植え付けられれば、自己否定と共に生きる人生に陥りやすいもの。
本来幼少期にもらえるはずの愛情を欲するあまり、大人になってまで愛情や賞賛に貪欲な人間に育ちます。
劣等感を押し込め「素晴らしい自分」の鎧を着ることが自分の心を守る術。
逆に、親からの適切な愛情を受けながら、失敗や挫折に向き合ってきた人は、幼児的万能感を抱えにくいとも言えるでしょう。
幼児と幼児的万能感の違い|人選と感情利用の確信犯
幼児的万能感を抱えた人間は、一見駄々をこねる幼児。ですが幼児とは明確な違いがあります。
それは、他人の感情を利用する知能があるということ。
赤ちゃんや幼児は、ただ単に快・不快で泣き叫び、欲しいものを得ようとします。そこに相手の感情や相手が誰かは関係ありません。
一方、幼児的万能感を抱える人間は、相手をよく観察し、利用できる人間を選んでいます。
優しく愛情深い誠実な人間は格好のターゲット。要求や傲慢さも反応を見ながら調節し、「ここまでなら大丈夫だな」と学習しながらレベル上げ。
確信犯です。
相手が違和感を抱けば、「お前が悪いから仕方ない」と相手の罪悪感や劣等感を巧みに利用することで感覚を麻痺させます。
望みを叶えるために、初めは紳士的で優しさを演出する人間も。
外では大人しく穏やかな人間なのに、家庭内では不倫にモラハラ、無視見下し。一番守るべき存在を弱者扱いし、優位に立つことで自尊心を膨らませます。
そして自分が不都合な状況に陥れば「かわいそうな俺」を演出。周りを味方につけ、素晴らしい自分を死守します。
幼児的万能感は、幼児のような純粋さとは真逆だね。
図体のデカい幼児が無駄に発達した知能をフル稼働させ、他者の感情を利用することで幼児的な望みを叶える、陰湿的な性質です。
幼児的万能感を持つ人への適切な対応
幼児的万能感を持つ人は見た目は普通の大人なので、当たり前の人間として接してしまいがち。
しかし彼らをまともな大人と思い接するほど心は疲弊する一方。「理解してあげられない私がダメなんだ」と、あなたのまともな感覚まで吸い取られます。
幼児的万能感を持つ人間には、「しつけ不可能な幼児」と認識することが大切です。
対応1:求めるものを与えない
幼児的万能感を持つ人間が欲しているのは、賞賛・評価・愛情・快楽。
それらを与えてくれる従順で誠実な人間を意図的に選び、理想化し距離を縮めます。しかし決して愛情や信頼で繋がったものではなく、単なる利己的利用。
彼らを満たそうとするほど、利用される道具に成り下がります。
だからあんなに尽くしたのに、アッサリ用済み扱いされたんだ。
愛情を取り戻そうと望むものを与えようとしたり、感情を察したり、正解を探して演じたりすると泥沼化。
「コイツには何やっても大丈夫」「コイツの価値は低い」と学習します。
与えれば与えるほどエゴが養われ、人間以下の扱いが酷くなる始末。
- あえて望むものを与えない
- あえて気持ちを思いやらない
- あえて相手の中の正解を探さない
これら姿勢が、搾取の深刻化を食い止めます。
対応2:責任の所在を明確にする
幼児的万能感を持つ人間は、自分の問題をあたかもあなたの問題かのように押し付けます。
あなたを悪く言ったり、あなたの至らなさを責めたり、あなたをちっぽけな存在扱いしたり。
だからこそ、罪悪感も劣等感も「私は受け取りません」と心に侵入を許さない姿勢が大切です。
- 責任転嫁発言は否定する
- 攻撃に動じないスタンス
- 相手に向き合わない
あなたが反省したり、弱る姿を見せたり、向き合う姿勢を見せれば「責任を投げつける余地がある」と思われます。
彼らの責任は彼らに取らせる意識が必要。
あなたが責任を肩代わりする必要はありません。
対応3:現実をもって対処
責任の所在を明らかにするとはいえ、「あなたがこうだから悪いのよ」と挑発に乗ったり言い返したりは禁物。
分かり合えるどころか、彼らの感情を逆撫でするから。【自己愛憤怒】という激しい怒りに変わり、もっと攻撃が強まります。
ここで大切なのが、現実をもって淡々と対処すること。
- 不倫の証拠
- モラハラ言動の詳細な記録
- 自分が家庭に向き合っていた証拠
ひとつずつ状況証拠と詳細な経過記録を積み重ねていくことで、今後の重要な局面で有利に働くはずです。
感情的にやり合っても何の意味もありません。
自分の体裁守ることしか考えてないから、分かり合えるはずないもんね。
感情のままに動けば、「確かにモラハラ気質のある妻だ」と先方発言の肯定材料になることも。その方がよっぽど不利。
だから、ゴールを決めた上で現実をもって淡々と対処するのです。
対応4:距離をとる
幼児であればしつけも可能ですが、幼児的万能感を抱えた人間を今さらしつけることはかなり困難。
- 愛情注ぎ続ければ分かり合える
- 子どものためなら改心するはず
- 私がちゃんとしてればいつか戻るはず
全て幻想です。
一緒にいればいるほど搾取は進み、人間以下の扱いをされた挙句、いつの間にかあなたが悪者状態。気づいたときには、抜け出す気力も判断力も残っていないかもしれません。
幼児的万能感を抱えた人間からは、早めに離れる覚悟が肝心。
- 今さら改心しない
- 分かり合えない
- 話が通じない
そのくせ感情を平気で利用する有害人間だと、認識しましょう。
あなたは彼らの母親ではありませんから。
自己愛人間から離れる際、真剣に反省する様子を見せるパターンもある。謝罪時の自己愛人間の思考はしっかり認識しておきましょう。
真の大人とは自分の幼児性を認められる人
心の中の幼児さは、実は誰しもが持っているもの。
当然私の中にもあります。
無性に腹たつこともあれば、悔しさ、劣等感に苛まれることもある。相手のせいにしたくなることもあるし、自分の愚かさに自己嫌悪に陥ることもある。
しかし、自分の幼稚さを認識し「それも自分」と受け入れられるのが本当の大人ではないでしょうか。
幼稚で惨めで感情豊かで失敗だってたくさんする。苦しくて辛くて本当は逃げ出したい現実だってある。でも自分が何とかするしかなくて心が折れそう。
そんな不器用な自分に向き合いながらも、自分の選択に責任を持ち一歩一歩成長していく。
そこに、人間としての尊さがあるように思えます。
自己愛人間は、葛藤や成長機会を全て放棄して他人のせいにするだけの人間だよね。
あるがままとワガママを混同し、「自分らしく生きる」「人生は一度きり」との大義名分のもと、平気で他者の心を痛めつける。
彼らと対峙する際、「冷静な俺大人、感情的なお前子ども」のような蔑む態度が垣間見えます。
しかし、本当の子どもはどちらか。本当にちっぽけな人間はどちらか。
わからないまま逃げ続ける人生、残念でなりません。
まとめ|幼児的万能感を抱える人間は与えるほどエゴが肥大化するモンスター
自己愛人間のような幼児的万能感を抱える人間は、わがままなくせに大人の理屈をこねるズル賢い幼児。
周りは自分がコントロールできると本気で考えています。
- 自分は特別で優秀
- 自分は与えられて当然
- 理想以外は受け入れない
- 周りは自分を評価すべき
- 他人の感情は理解したくない
- 些細な否定に打たれ弱い
- 不都合な状況は他人や環境のせい
みっともない子どもおじさん。
一見落ち着いた大人の雰囲気に騙されますが、心の中は劣等感と羞恥心でドロドロ。その醜さを必死に隠し、「素晴らしい自分」に酔いしれます。
幼児的万能感を抱えた人間を、満たそうとすることはやめましょう。
与えるほどエゴが肥大化するモンスターだもんね。
相手の立場に立てるあなたはとても素敵な人。ですが優しさも愛情も信頼も、彼らにはただの養分。
あえて欲しいものを与えないことも強さです。
彼らはあなたをちっぽけ扱いするかもしれませんが、ちっともちっぽけではありません。
自分に向き合ってるあなたにこそ未来がある。本当に大切なものを見つめ守ろうとしてる、あなたにこそ未来がある。
あなたの人生、子どもおじさんからしっかり守ってくださいね。
偽りだよ!