- 不倫するけど子どもには良い父親なの
- 私には冷酷だけど子どもは可愛いみたい
- 子どもから父親を奪ったら申し訳ない
不倫三昧なのに責任転嫁。無視見下しで罪悪感を植え付けてくる夫。
そんな人間でも子どもとはよく遊び優しい様子に、「このままが子どものためなのでは」と離婚に踏み切れない方は多いでしょう。
娘も夫に懐いてるし、私さえ我慢すれば上手くいくと思うんだ。
離婚が自分のエゴにも思えてくるよね。でもその考え方、危険かも。
不倫で弱る妻をさらに追い込み続ける人間は、いくら良い父親に見えても子どもを見ていないことがほとんどです。
彼らが子どもを可愛がるのには意図があります。放置すれば、子どもを守るための選択が子どもを大きく傷つける結果になりかねません。
この記事では、自己愛不倫夫を良い父親と思うことの危険性ついて解説します。
筆者は元サレ妻で夫婦心理カウンセラー。自己愛性の元夫に苦しめられたNPDサバイバーでもあります。
自己愛夫の心理を理解すれば、真に子を守る選択は何か、考えるキッカケとなるでしょう。
親としての自己愛人間|3タイプ
不倫しながらも悪びれず、相手を悪者に仕立て上げ被害者ヅラする不倫夫は意外と多いもの。そのような夫は、自己愛人間の可能性があります。
歪んだ自己愛を抱える人間。空想上の「イケてる自分」に過剰な愛を持つ。共感性がなく他者を傷つけても平気な反面、他者評価には敏感。自己愛性パーソナリティ障害(NPD)と診断されることも。
夫婦としての自己愛人間の思考は、以下の記事で解説しています。
では、親としての自己愛人間にはどのようなタイプがあるのでしょうか。
大きく以下の3つに分けられます。
※この記事では「自己愛夫」と表現することがありますが、自己愛人間に性別は関係ありません。父親母親共に自己愛人間は存在します。
タイプ1:無関心型
子どもにほぼ関心を示さないタイプです。
お世話は基本せず、一緒に遊ばず、会話は最低限。友人関係や学業にも関与せず、妻に任せきり。
お世話なども言われればやることもありますが「俺様がやってあげてる感」をかもち出します。「これだけやった俺を評価しろ」と言わんばかりの態度。
妻と恋愛関係の頃は一見良い関係性に見えても、快楽や刺激に最大の喜びを感じるこのタイプは、初めから父親になる気がありません。
しかし自分でその性質に気づかず、子どもを作ります。
自分がチヤホヤされるだけの関係性でなくなり、理想から外れたと妻の価値を切り下げ。家庭の外に居場所を追い求めます。
私の元夫はこのタイプでした。
当時0歳の娘のお世話は全て私。社内不倫の元夫は毎日残業のフリして夜遅くまで不倫。休日も不倫デート。娘の面倒を見ることも構うことも、寝顔を見ることさえもなし。
このタイプは明らかに父親としての役割を果たしてないので、本記事でいう「良い父親」の論点とは異なります。
タイプ2:積極関与型
子どもと積極的に遊び、お世話し、行事にも参加し、進路にも関心を持つタイプ。
裏では不倫や妻に威圧的な態度をとっていても、一見「子どもを愛している良い父親」に見えてしまうのがこのタイプです。周囲に目にも、子ども思いな優しい父親に映ります。
実際は、このタイプの自己愛夫は支配欲や承認欲求が人一倍強い傾向があり、そのために子どもを活用します。無関心型と異なり子どもも懐いていることが多いです。
夫の態度に傷つきながらも、良い父親を子どもから奪おうとする自分に嫌悪を感じる妻も。
父子で仲良くしている姿を見ると「消えるべきは私の方」と思ってしまう。
子どものことを愛してるように見えるこの姿の、本当の意図を知ることがカギとなります。
タイプ3:無関心関与型
無関心型と積極関与型のハイブリッド型。
基本は自分への関心が最優先で、自ら進んでは子どもと関わりません。しかし会話は普通にするし、自分の気が向いた時はお世話したり、自分の負担にならない程度に遊んだりお出かけもしたりする。
子どもに愛情示されたら可愛がったり優しい様子も。一見子どもにとっては害のない父親です。
良い父親と思える父親は、積極関与型か無関心関与型です。
可愛がって親の役目も果たしてるなら、良い父親では?
そうとは限りません。妻への無価値化と子どもへの愛は、無関係に見えて密接に関係しています。
子どもが大切な親は夫婦関係を大切にする
自己愛人間は子どもを愛しているように見えて、決して愛してなどいません。子どものことが大切な親は、夫婦関係を大切にするから。
親の笑顔が子どもにどれほど重要か、ちゃんと理解しています。
両親が笑っていれば子どもも自然と笑えますし、不仲であれば子どもの笑顔は奪われるもの。
- 両親に会話がない
- 毎日喧嘩ばかり
- 外に愛人がいる父親
- 父は母を雑に扱う
- 母はいつも辛そうに耐えている
「両親の不仲は自分のせい」そう思う子どもは本当に多いのです。
夫婦関係があってこそ子どもの健全な心があると、子どもが本当に大切ならわかるもの。
しかし自己愛人間は、自らの不倫で大きく弱る妻に対し、自己保身のため罪悪感を植え付けたり無視貫いたり冷酷な態度で萎縮させたり。
そのように子どもの母親を無価値化する人間は、子どもの心を痛めつけて見て見ぬふりをしています。
子どもへの影響が想像できないから?
想像する気がないんだよ。子どもの心に関心がないから。
それならなぜ、子どもを可愛がる様子があるのでしょうか。
自己愛の親は、子どもを利用して自分の欲しいものを得ようとしています。
自己愛人間にとっての子どもの存在意義
自己愛人間が欲しいもの、それは「自尊心・承認・愛情・優越感」。
彼らは自信満々で虚勢を張っていますが、本当は劣等感の塊です。幼少期の頃の、親の歪んだ自己愛による影響が原因とも言われます。
しかし弱くてみっともない等身大の自分を受け入れることは、彼らにとって耐え難い苦痛。だから他者から承認や賞賛を得ることで自分を価値ある人間と思おうとします。
自己愛人間にとって子どもは、それらを満たす道具に過ぎません。
※どの利用要素を強く感じているかは、自己愛人間によって個人差があります。
意義1:自尊心を感じさせてくれる
子どもは自分を引き立たせてくれる存在です。
- 妻子持ちというステータス
- イクメンの俺を周囲に見せつける
- 「良き父親」の評価を得る
- 優秀な子を持つ俺、イケてる
お出かけ時には率先して抱っこ紐に子ども抱えたり、外では家以上に子どもを気遣う様子を見せたり、子どものために自分はこれだけやってる感を周囲の人にアピールしたり。
また、子どもの評価=自分の評価と考える節も。少しでも学力の高い学校に行かせようと、子どもの成績に熱心に関与するのもこのため。
そこにあるのは、勝ち負け思考や自他身分離。
強い劣等感から人に負けたくない思いが強く、子どもを利用して周りに勝ったと自尊心を膨らませる。子どもは自分の一部であり延長線上かのように、所有物化。
元夫は娘に無関心でしたが「イケてる俺」のために娘を利用していました。
親族の集まりのときだけ娘をしきりに抱っこしてあやす。外で、俺はこんなにお世話してますアピール。「将来娘の運動会で、かっこいいパパねと言われたい」との発言も。
子どもに向き合っているようで、自分の評価を高める道具でしかありません。
意義2:承認欲求を満たしてくれる
自己愛人間にとって子どもは、無条件で愛情や承認を与えてくれる存在。
自分に自信のない彼らは、人から愛されることや必要とされることを非常に欲しています。その点子どもは、自分に笑いかけてくれ、愛情を示してくれ、絶対的な味方でいてくれる。
でも私も娘の笑顔に救われてるよ?私も同じ?
全然違う。子どもが幸せに生きられるよう守ってあげたいと思うでしょ?
自己愛人間は逆に、子どもに幸せにしてもらおうとします。「自分がこの子を守るんだ」という概念はありません。与えてくれるから、愛情に類似したものを注いでいるだけのこと。
だから不倫して家庭を粗末にするくせに、子どもに執着し手放そうとしない自己愛親も多くいます。
本人も無自覚です。
意義3:優位性を実感させてくれる
不倫中の自己愛人間は、妻を敵認定していることが多いもの。
- 俺と彼女の仲を邪魔する存在
- 俺の非を指摘する邪悪な存在
- 俺の自由を奪う存在
そこで自分には味方が必要です。自分に懐く子どもは自己愛人間にとって恰好の味方。
子どもが自分に慕う様を妻に見せつけることで、
- 俺はこの家で重要な人物なんだぞ
- 俺はお前より上だぞ
と妻に劣等感を植え付けます。
不倫や蔑みに苦しむ妻の方が「私はこの家に必要ないのでは」と無価値感で支配されることに。
自分の好都合に物事をコントロールするため。
そのような自己愛人間は、パートナーが子どもと仲良くするとさらに敵視を深めます。所有物が奪われた感覚になるためです。
意義4:支配欲を満たしてくれる
子どもからしたら、親は絶対的な存在です。
辛くあたられたり、機嫌に振り回されたり、完璧を求められたり、一方的に切り捨てられたりする場合でも、子どもは親の愛を求めます。
親に好かれようと必死に耐えるし、要求に応えなきゃと思うもの。
全ては弱くてちっぽけな自分を見たくないから。自分より弱い存在を作り上げ、「俺がコントロールしている」と思えば自分は簡単に価値ある人間になれます。
子どもの無条件の愛を搾取してるよね。
不倫して好き放題なのに、この家庭を牛耳ってるのは俺だと支配欲を満たし自惚れるのです。
自己愛人間にとって子どもは、自分の価値を認識するための道具。都合が良いから可愛がってる。
親としての機能を果たさない自己愛人間
たとえ利用でも、娘に優しいなら親としては問題ないよね?
問題大アリだよ。
自己愛人間が子どもを可愛がるのは、子どもに利用価値があるから。しかし子どもが自分の理想から外れれば話は別です。
役割を果たさない子どもへの対応
自尊心・承認・愛情・優越感などを子どもが満たしてくれるうちは、自己愛人間は子どもをとても可愛がります。
しかし子どもがいつでも好都合な存在であるとは考えにくいもの。
成長過程で自己主張もするし失敗もある。必要以上に愛情や関わりを求めてきたり、父親の態度を疑問視したり。成績が振るわないこともあるし、親から自立しようとしたりもする。
想定から子どもが外れたとき、自己愛人間の態度は一変します。
- 一気に無関心になる
- 子どもの価値を切り下げる
- 愛を与えず恐怖心を植え付ける
- 恥の感情や劣等感を植え付ける
- 威圧的に行動を矯正する
- 執着して手放さない
- 自立の妨害
自分への愛情をうまく利用し、「こうしないと愛与えないよ」と言わんばかりに機嫌を変え恐怖で子どもを支配。もしくは無価値化。
しつけとの大義名分のもと「親=正義」を振りかざす。罪悪感を植え付け「悪い子」と思わせ、思い通りに動く「良い子」のときだけ愛情や優しさを与えます。
子どもを守らない・感情理解しない
自己愛人間は、子どもが困難に直面した場合でも子どもを守ることはありません。
子どもの感情に関心がないから。
関心があるのは、自分が賞賛・愛情・快楽を得ることだけ。「イケてる自分」にしか興味がなく、いつだって自分の欲や保身が最優先。
「辛かったね苦しかったね、変わってあげたかったよ」と思うどころか、自分の体裁を気にし「なんで〇〇しなかったんだ」と責めることさえあります。
子どもの意見や気持ちは基本無視です。
また、子どもを苦しめた相手の責任を必要以上に問う場面も。一見子どもを守る姿にも見えますが、実はそうではありません。
相手より優位に立つことで支配欲を満たし、自分の価値を実感するのが目的です。
実際、苦しむ妻に責任押し付けながら平然と不倫。悲しく落ち込む母を心配する子どもの心を無視し、「ママは何もできなくてダメだよね〜」と言ったりします。離婚で子どもの人生が狂おうと、平気で責任放棄する場面も。
欲と保身のために家族の心を踏みつける人間が、本当に助けが必要な場面で子どもの心に寄り添い、守ることなんてできるでしょうか。
愛情が欲しくて良い子を演じても、本物の愛情はもらえず、感情は否定される。
自己愛人間のもとで育つ子どもの行く末
でも結局、懐いてるなら父親がいた方が娘のためだよね?
その思考は危険。子どもを生涯にわたり苦しめる結果にもなり得るんだ。
小さい子にとって親は絶対的な存在。純粋に愛情を求めます。しかし成長するに従い、関係性は少しずつ変化。
自己愛の性質は子どもに大きな影響を与えます。
- 父親の異常性に気づき嫌悪する
- 子どもまで自己愛人間になる
- 自己愛の被害者体質になる
親の不倫は子どもにとって、想像以上の衝撃です。「自分は愛されていない」の決定打になるから。
ただでさえ愛情は否定され、感情は無視。常に親の顔色伺いで生きてきた。
愛情に条件を求められるほど、子どもには以下の思考が植え付けられます。
- 私は愛されない子
- ありのままの私は醜い
- 私がダメな子だからいけないんだ
- 私は私であってはいけない
- 本当の私には価値がない
- 良い子であれば愛されるはず
支配と服従の親子関係で育つと、自分を否定して生きてしまうもの。
そうすれば大きな劣等感から本当の自分に蓋をし、他者の目を通してしか自分の価値を実感できない人間に育ちます。
そう、自己愛人間。自己愛の性質は非常に連鎖しやすいのです。
苦しい思いをしてきたにもかかわらず、被害者ポジションから抜けきれず「周りが悪いんだ。自分は悪くない」といつの間にか加害者化。
自分の中の劣等感を配偶者や子に投影し、被害者のフリして本当に大切にすべき人たちを傷つけます。幼児のままで時が止まると非常に危険です。
逆に、自己愛人間に惹きつけられやすい体質になることも。
ありのままの自分が嫌で、相手に応え続けることで自分の存在価値を見出します。「支配=愛情」となり、自己愛親と同じような人を無意識に選ぶことで安心感を得る。自分の心を犠牲にしてまで、共依存から抜け出せない。
中には自己愛親の異常性に気づき、心理的距離を取れる子も存在します。
しかしその場合も、苦しむ母親の慰め役となり、ヤングケアラー化する子どもも多いでしょう。
まとめ|自己愛人間にとって子どもは自己陶酔の道具
自己愛夫が子どもを可愛がる様子を見て、「子どもにとっては良い父親。離婚したら子どもに申し訳ない」と思う人は多いもの。
しかしその考えは非常に危険。
父親不在よりも、自己愛人間のもとで育つことの方が、子どもの自己愛を壊すから。
いくら愛情を注いでいるように見えても、自己愛人間にとって子どもは自分満たしの道具にすぎません。
- 自尊心を感じさせてくれる
- 承認欲求を満たしてくれる
- 優位性を実感させてくれる
- 支配欲を満たしてくれる
決して真の愛情を持つことも、感情に寄り添うこともありません。寄り添うフリをしても子どもには伝わります。
愛情や感情を否定されて育つ子は、以下のような状態になる可能性も。
- 父親の異常性に気づき嫌悪
- 自己愛人間に育つ
- 自己愛被害者になる
幼少期に傷を受けて育った自己愛夫や、そんな人間に身を捧げてしまう私のように。
自己愛に欠陥を抱えて生きるのは、本当に苦しいものです。確実にそうなるわけではありません。自己感覚を保ち、反面教師にできる子もいます。
しかし自己愛の連鎖を止められるのは、本当に子どもを守りたいと思っているあなただけ。愛情を搾取する者から適度な距離をとることも、子どもを守ることではないでしょうか。
あなたのたくさんの愛情と共感は、お子さんにとって安心の居場所になるはずです。
一概に自己愛人間と言っても、人により、また家庭の状態により、真の課題も対応も異なります。
頑張ってやっている対応が、問題の本質を見誤ったばかりに逆効果となることも。
- うちの夫は自己愛人間?
- どう対応するのが良い?
- 離れたいけど離れたくない
- うまく交渉するコツは?
- 子どもにとって最善って何?
現在置かれている状況を、いま一度一緒に見ていきましょう。個別相談にて対応しています。
自己愛守ろう