- 自己愛夫に散々苦しめられてきた
- 子どももいて簡単に離れられない
- 優しい夫に戻して仲良くしたい
不倫にモラハラ。家族を散々傷つけ、悪びれる様子もなくあなたに責任転嫁してきた夫。
なぜこんなことになったのか。調べていくうちにある結論に辿り着くことがあります。
「夫は自己愛性パーソナリティ障害かもしれない」
これを知ったときの衝撃は大きいでしょう。かつての優しい夫は偽りだったのかと。だからといって、簡単に見切りをつけるなんてできないもの。
愛情深い人ほど「一緒に治していきたい」という思いが湧きがちです。
自己愛の性質さえ治れば、仲良くやっていけるよね?
歪んだ自己愛を治すのは限りなく難しいんだ。
治すために良かれと思いやった行動が、さらに自己愛を強めてしまう可能性も。
この記事では、自己愛の性質を治すことが困難な理由と、治る条件について解説します。
筆者は元サレ妻で夫婦心理カウンセラー。自己愛人間の元夫に精神崩壊寸前まで追い込まれた、元NPDサバイバーです。
自己愛人間との関係悪化を抑えつつ、適切な距離感を掴んでいきましょう。
自己愛人間|他者犠牲の上で「理想化した自分」に酔いしれる人間
不倫しながらも無視や見下し、また妻を責め罪悪感を植え付ける夫。モラハラ気質のある夫。これらは自己愛人間を疑う必要あり。
歪んだ自己愛を抱える人間。空想上の「イケてる自分」に過剰な愛を持つ。共感性がなく他者を傷つけても平気な反面、他者評価には敏感。自己愛性パーソナリティ障害(NPD)と診断されることも。
自己愛には「健全な自己愛」と「不健全な自己愛」があります。
自己愛人間が持つ自己愛は後者。彼らは自信満々で自分は間違ってないと思い込みますが、本当は自分に自信がありません。
劣等感や恥の意識の塊。それを自覚しないよう「イケてる自分=本当の自分」と思い込みます。自信満々で他人を見下す姿は、自身の中に埋めた劣等感の表れです。
そのために他者を犠牲にすることは厭いません。一種の防衛反応であり、彼らの生きる術です。
自己愛性パーソナリティ障害の安易な断定を避けるため、当サイトではこの傾向の強い人間を『自己愛人間』と呼ぶ。
歪んだ自己愛を治すことが困難な理由
夫が自己愛人間ならば治していこうと寄り添う人は多いです。
しかし冒頭でも話した通り、自己愛人間を治すことは相当困難。それほど彼らは「イケてる自分」に固執しています。
理由1:自己愛人間の自覚がない
自己愛の性質を治すには、自分が自己愛人間であることの自覚が必要です。
しかし彼らにその自覚はありません。
- 自分は素晴らしい人間
- 自分が間違ってるはずがない
- 自分は与えられて当然の存在
心の中は2歳児です。周りの人間は自分を理解して当然という「幼児的万能感」の持ち主。
しかも幼児のような純粋さや素直さは持ち合わせていません。
理由2:自分に問題があると自覚したくない
自己愛人間は自分を自己愛人間であると認めたくありません。
認める=醜い自分の自覚。それは彼らにとって致命傷であり、触れられたくない傷です。
だから自分の行為を省みることなく、自分の問題を相手の問題にすり替えます。
- 自分は悪くない
- 相手が悪いから仕方ない
- 俺を否定する相手がおかしい
- 俺を評価しない相手がバカだ
自分の問題に言及する人間を敵視。
相手を悪者にし、見下し、排除することで「自分は正しい」と思い込みます。家族でさえも。
そうやって「イケてる自分」の殻にこもり、自分の問題から逃げ続けます。
「相手が悪い、自分は被害者」と思える理由は『投影』という心理メカニズムによるもの。「投影の仕組みと対処法」にて詳しく解説しています。
理由3:自己愛を治す必要性を感じない
自己愛人間は自己愛の性質を治したいと思っていません。なぜなら特に困っていないから。
困ってるのは関わる私たちの方だもんね。
無価値化され、問題を押し付けられ、精神が壊れるまで追い詰められる。
妻の鋭気が吸い取られてくのを引き換えに、自己愛人間は自らのエゴを膨らませます。
そして彼らには二面性があり、外ヅラ抜群な性質をフル活用。
- 良い人ぶって第三者を味方につける
- 「かわいそうな俺」の演出で同情を誘う
- チヤホヤしてくれるターゲット発掘
- 親に自分の罪を尻拭いしてもらう
味方づくりが得意な自己愛人間は、自己愛人間のままで何の不都合もありません。
そうやって他者のせいにし続けたり、自分の味方がいるうちは、自己愛は治るどころか加速します。
理由4:専門家もお手上げ
自己愛人間を病院やウンセリングの場に連れて行ったとしても、治すことは困難です。
- 治療の場に行くことを頑なに拒否
- 自己愛性の診断が下りにくい
- 治療方法が確立されてない
- 治療者を侮辱・通院拒否
まず治療の場に行きたくありません。自分はまともな人間と信じ込んでいるから。
いざその場に行っても、診断が下ることはほぼありません。彼らは良い人を演じることに長けています。
診断されても治す方法が確立されていません。そもそも性格の問題であり、これ自体を治す薬はなし。さまざまな方法はありますが、本人に治す意欲がない限り無意味です。
専門家もお手上げ状態なんだ。
さらには自分への否定と捉え、治療者を「能力がない」と侮辱。
「こんな奴らと話すだけ無駄だ」と言わんばかりに通わなくなり、自分と向き合うことを拒絶します。
夫の自己愛を治すためにやりがちな【NG対応】
自己愛人間の自覚がないなら、教えてあげれば良いのでは?
それは絶対ダメ。もっと厄介なことになるよ。
夫の自己愛を治したいと一生懸命になるがゆえに、妻がとりがちな行動があります。
しかしそのほとんどの行動が、自己愛人間には逆効果なのです。
NG例1:自己愛人間であることを指摘
自己愛人間に「自己愛性パーソナリティ障害じゃない?」と指摘してはいけません。
これは絶対です。「俺をおかしい奴扱いしやがって」と思い、徹底的に牙を剥き始めます。心の中にはドロドロした劣等感や恥の意識があり、それこそが一番の心の闇。そこに触れる者は敵です。
『自己愛憤怒』という激しい怒りが呼び起こされ、無視や見下し・罵倒・無価値化が一層深刻化。
責めるつもりではなく、一緒に治していこうよってスタンスでもダメ?
それもダメ。優しく言っても同じだよ。
どのような言い方であれ「イケてる自分」を否定された感覚。だから事態は悪化するだけです。
NG例2:正論や感情をぶつける
「ちゃんと話し合えばわかり合えるはず」と思い、話し合いを持ちかける人も多いでしょう。
- 正論や理屈をもって説得する
- 普通なら・夫婦なら・父親なら発言
- 苦しい感情訴える・泣く
- 家族を壊すことだと思考を促す
- 子どもの気持ちを考えるよう促す
以前はちゃんと心が通じ合っていたんだもの。「こんなに苦しんでるんだよ」「子どもの人生に影響することなんだよ」と伝われば、きっと変わってくれると思いがちです。
しかし伝わりません。彼らは、人の気持ちがわからないのではなく、わかりたくないから。
「自分は正しい」と思い込みたい彼らにとって、正論を突きつけられることや感情を訴えられる行為は、「あなたは正しくないんだよ」と言われているのと同じこと。
だから「俺を攻撃する者」として、あなたへの敵視が深まります。
NG例3:良い妻になろうとする
私が良い妻になれば、きっと変わってくれるはず。
残念ながらそれも逆効果。自己愛人間は恩を仇で返す天才だよ。
- 辛くても夫の前では笑顔でいよう
- 帰りたくなる家にしよう
- 女らしくして振り向いてもらおう
- 夫に求められたら喜んで応えよう
- 怪しい行動あっても考えないようにしよう
「そうすればきっといつかまた笑い合えるはず」と思いますが、ありません。自ら支配されに行くようなもの。
筆者自身もこの思考に陥った挙句、絶望が深まる結果になりました。
心では辛くて苦しくて泣き叫んでるのに、居心地の良い家にしなきゃとニコニコ。でも変わるはずなかったんです。それが自己愛人間の戦略だから。
あなたに罪悪感や劣等感、恐怖心を植え付けることで、自分の好都合に物事を運びたい。そのためならあなたの愛情や優しさを平気で利用。
自分の思い通りに動くあなたを見て、「コントロール成功」「コイツには何してもOK」と見下しを深めます。
敬意や愛情が芽生えるはずもなく、人間以下の扱いが強まるだけ。
放置するとヤバい|自己愛人間の末路
治らなかったら自己愛人間にはどのような末路が待ってるの?
自己愛の性質は自然と治ることはありません。歳を追うごとに強まると言われています。
若い頃は魅力的な姿を演じてきた彼らも、容姿は衰え、会社も引退し、イケてる自分の姿はありません。
- 自己陶酔のターゲット
- 自分を肯定してくれる味方
- おだててくれる部下
- 尻拭いしてくれる親
これら自分の取り巻きはみるみる消えていきます。
自己愛人間は、自分一人では虚勢を張ることができない小心者。味方の不在により「何もない空っぽな自分」に直面します。
でもそんな現実見たくありません。だって自分は素晴らしいんだもの。
- 必要以上に若作りにこだわる
- かつてのターゲットに執着
- 愚痴や文句、周りの人を侮辱
- 過去の栄光に縋り続ける
自分本位に生きてきたから寄り添ってくれる人もおらず、「周りが自分をわかってくれない」「お前らは馬鹿だ」と最期まで他人のせい。醜い生き方に気づかず人から疎まれ、孤独に生涯を終えることが想像に難くありません。
妻子がいた場合、寄り添う妻の心が犠牲となったり、子どもから軽蔑されることも。
夫の歪んだ自己愛【治る条件】は自覚すること
自己愛の性質を治すことは本当に無理なのでしょうか?
かなり困難ですが「可能性は0ではない」が正解。しかしそれには条件があります。
最大の条件は、本人が「治さないとヤバい。治すんだ!」と思えるかどうかです。
条件1:困難な状況にあると認識する
自己愛人間は自分が自己愛であることに困っていないと先に述べました。
- 味方作りが上手だから
- 他者に問題を移し替えればいいから
困らない限り成功体験ばかり積み重なり、自己愛は加速。
だからこそ、困る状況に陥ることがポイント。
- 地位や名誉がなくなる
- 味方やターゲットの不在
他者からの賞賛や肯定でエゴを養う彼らは、自分一人では心を保つことができません。
だから味方がいなくなることで、孤独感・敗北感・挫折感に襲われ、心が折れてしまうことも。「自分にはもう何もない」という大きな絶望。
そこで初めて困った事態を認識し、気分の落ち込みを理由に病院やカウンセリングにかかる人もいます。
「相手をこんなに苦しめていた」と気づいて改心するのではなく、「自分がこんなに苦しんでいる」との気づきが出発点です。
条件2:自分に問題があると自覚する
自分の苦しみに気づいても、それを他者のせいにするのが自己愛人間。
「この困難は自分に問題があるから」と気付けるかどうかが、最大の難関であり自己愛改善の分岐点です。
ネット情報、病院、カウンセリングなどで、自分の苦しさの答えを探すうち、自らが持つ自己愛の性質に気づくことがあります。
自分の周りから人がいなくなったのは自分に問題があるからだ。だから苦しむ事態になっている。この状況は自分が引き起こした結果。治さないとヤバい。
そう気づける人は、治る兆しのある人です。が、気づくのはごく一部。
決して、自己愛の成功体験を積んでいる最中には気づきません。
もしくは自分に問題があると気づける人は、そもそも自己愛人間ではない(自己愛被害者)の可能性もあります。
条件3:等身大の自分を受け入れる
具体的に自分の問題に向き合っていく段階です。
- どのような性質に問題があったのか
- 自分の言動が他者に与える影響
- なぜそのような言動をしてきたか
それらを紐解きながら、適切な他者との関わり方を学び実践していきます。相手の話をよく聴く訓練(感情を感じ取る訓練)も有効です。
合わせて、自己愛人間の傷でもある「本当の自分」を受け入れる作業が肝心。
自分の中の劣等感・恥の意識・愛情欠損・理想への過度なこだわり。これらを認め、「イケてる自分」の殻を脱ぎ捨てること。
- カッコよくなくていい
- 失敗することもある
- 弱い自分だっていい
- みっともなくていい
条件4:健全な自己愛を育む
ありのままの自分を許容できれば、もはや偽りの自分を守るため、虚勢を張る必要はありません。他者を見下したり理想を押し付ける必要もありません。警戒心張って過ごす必要もありません。
次第に他者の弱さや人間らしさも受け入れることができるようになります。
その状態で人と関わっていくと、今までとは違う世界が見えてくる。その中で芽生える温かな感情が、健全な自己愛を育んでいきます。
夫の自己愛を治すより大事な『自分を生きる覚悟』
とはいえ、自己愛人間に対しては「治らないもの前提」で対応するのが望ましいです。
エゴを養う存在(あなた・不倫相手・親など)がいる時点で、自己愛は治りません。
お得意な虚言や魅力、「かわいそうな俺」の演出で、新たな味方・ターゲットを作り続けます。本当の孤独や絶望で困難に陥るのは、ずっとずっと後のこと。
それでもなお人のせいにし続け、「自分が間違ってるはずがない」を突き通すのが自己愛人間というものです。
「私が何とかしなければ」と寄り添い続けることは、共依存を深刻化させます。あなたが自分を責め、生きる気力は奪われ、子どもまで不健全な自己愛を持つ可能性も。
寄り添うほど、自己愛人間に成功体験を与えます。
だからあえて、突き放すことも愛情ではないかと思うのです。
他人を変えることはできません。「他人を変えるために自分を変えよう」も、他人を意図的に変えようとしているのと同じ発想。
変わることを期待しちゃいけないんだね。
自分の自己愛に向き合うのは、あなた自身かもしれません。
- 自己愛人間に尽くす先にあるのは何か
- あなたの本当に大切なものは何か
- このままで大切なものが守れるか
必要なのは、夫の自己愛を治す覚悟ではなく、「自分を生きる覚悟」。
すぐでなくても構いません。卑怯者に身を捧げてしまう自分の心と、ゆっくりじっくり向き合ってみてください。
まとめ|歪んだ自己愛は本人の自覚なしには治らない
夫に自己愛人間の傾向があるとわかっても、簡単に離れられたら苦労はしないでしょう。
「治して家族仲良くやっていきたい」そう思って当然です。
しかし自己愛人間を治すことは非常に困難。
- 自己愛人間の自覚がないから
- 自分の問題だと自覚したくないから
- 自己愛を治す必要性を感じないから
- 専門家もお手上げだから
しかし彼らは自覚したくないのです。だから相手のせいにしたり、相手の価値を下げることで「イケてる自分」の殻にこもり続けます。
結果、自己愛人間は何も困らないので、治す必要がありません。
夫の自己愛を治したい妻は、以下の行動をとりがちです。
- 自己愛人間であることを指摘
- 正論や感情をぶつける
- 良い妻になろうとする
しかしこれでは、自己愛の性質が強まり逆効果。窮地に立たされるのはこちらの方。
あなたにできることは、自己愛人間を治すことではありません。
自分の自己愛に向き合うこと。自分の人生を生きる覚悟を持つこと。
それがない限り、自己愛人間に舐められ搾取され続けます。
自分が本当に大切なものは何か。それを守るため、卑怯者に搾取されない強さを持つ。
誠実さと真の自己愛を併せ持った人には、きっと笑顔の未来があるはずです。
自覚なしには
治らない